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カスタマーサクセス憲章

前文

一般社団法人日本カスタマーサクセス協会は「カスタマーサクセス憲章」をここに宣言する。


本憲章は、カスタマーサクセスという言葉に一定の共通解釈を与えることを目的としている。それは、経済活動を通して自他の共栄を望むすべての人や組織が、カスタマーサクセスの考え方を理解し、それを用いて経済的な成果もしくはそれに相当するものを得られるようにするためである。


2015年頃から世界的な広がりを見せた、カスタマーサクセスという概念は現代の成熟期を迎えた社会と親和性が高い。特に21世紀は、各ステークホルダの利益の総和が長期的な観点で最大化される「持続的な成長」が叫ばれており、それ以前に支持された大量生産・大量消費とは異なる成長アプローチを保持しなければ、世界が更なる経済発展を得ることは難しいだろう。


本憲章がカスタマーサクセスという概念の規範となり、より多くの人々がこの考え方を用いて相互に経済発展することを切に望む。

第1条 カスタマーサクセスの定義

カスタマーサクセスとは、提供物の購買・契約をゴールとするのではなく、受領側がその利用を通じ、成果を享受するまで提供活動を継続することで、受領側と提供側が持続的に成長するビジネスアプローチをいう。

これは、購買を通じた受領側への一時的な「満足」の提供に留まらず、それに加えて、「成果」を与えることまでを提供側の責務と捉えることが、従来のビジネスアプローチとの最大の違いである。カスタマーサクセスを式で端的に表現すると以下となる。


CS(Customer Success)= CX(Customer Experience 顧客体験) + CO(Customer Outcome 顧客成果)


参考文献

第2条 社会背景との関連

カスタマーサクセスにおいてもっとも重視すべき思考の一つは、持続性(Sustainability)である。ここでいう持続性とは、提供側が真に受領側の望むものを必要十分な質と量で提供し、受領側はそれに見合う対価を納得して提供側に支払う形態をさす。この結果、持続的な経済活動が行える。

環境・社会・経済資源を無駄なく活用することが求められる現代社会において、このような成長アプローチこそが、経済発展の維持に必要とされている。カスタマーサクセスは、このような社会背景によって求められるようになったビジネスアプローチである。

第3条 カスタマーサクセスのミッションとビジョン

本憲章では、第2条で説明した成長の形を「持続的な成長」と呼ぶ。カスタマーサクセスのミッションは、より多くの人や組織が持続的な成長を体現できるようにすることである。多くの経済活動が持続的な成長を追い求めれば、それはいずれ、持続可能な社会の実現へと繋がっていく。これこそがカスタマーサクセスが求めるビジョンである。

第4条 カスタマーサクセスが適用可能な領域と対象

カスタマーサクセスはビジネスアプローチであるため、基本的には経済活動に適用できる。このことは、実際にビジネス活動を行っているかどうかに関わらず、ビジネスマインドを必要とするすべての人と組織が活用できることを意味する。

カスタマーサクセスが目指すのは、「持続的な成長」であるため、この趣旨に合う活動全般にカスタマーサクセスは適用できる、もしくは適用するようにカスタマーサクセス自体を変質させていかなければならない。

第5条 カスタマーサクセスの実行に必要な要素

カスタマーサクセスというビジネスアプローチを正しく機能させるために必要な要素は以下の三つである。


  1. 受領側への良質な体験
  2. 受領側が成果を得るための支援
  3. 提供側・受領側が利益供与関係を持続的に維持できる仕組み

カスタマーサクセスと従来型のビジネスアプローチの最大の違いは、2および3である。よって、当該活動をカスタマーサクセスと位置付けるには、1から3のすべてを満たしていなければならない。


1. 受領側への良質な体験

カスタマーサクセスにおいては、購買・契約行為の前後で受領側に良質な顧客体験を与えなければならない。提供側は自身の提供物を継続的に受領側に好意的に選択してもらうことを目的として、体験の向上を図るべきである。


2. 受領側が成果を得るための支援

カスタマーサクセスは受領側に成果をもたらすことを目的としているため、提供側はそのための支援を積極的に行わなければならない。この場合の「成果」は提供側の都合に基づくものではなく、受領側の意に沿ったものでなければならない。カスタマーサクセスにおけるすべての活動は、受領側に成果を与えることから逆算して設計されていることが理想である。


3. 提供側・受領側が利益供与関係を持続的に維持できる仕組み

カスタマーサクセスは「持続的な成長」を維持できるように努めなければならない。このために、提供側は社会情勢や市場のニーズ、および顧客要望の変化などを敏感に捉え、これらを自身の提供物に迅速に反映させる必要がある。カスタマーサクセスにおいては、このループを実現するための仕組みの構築・維持を目指さなければならない。

第6条 広義のカスタマーサクセスと狭義のカスタマーサクセス

一般的に、カスタマーサクセスという言葉には広義と狭義が存在する。広義のカスタマーサクセスとは、この憲章で述べられているビジネスコンセプトを指す。狭義のカスタマーサクセスとは、広義のカスタマーサクセスを実現するために考案されたメソッド、およびそれらを実行するための組織を指す。

一般に、狭義のカスタマーサクセスにおいては、顧客の契約・購買後のフォローに焦点が当てられるが、これは、契約・購買後の支援こそが、広義のカスタマーサクセスの実現に有効だからである。

2025年1月20日(ver 0.40β)

一般社団法人 日本カスタマーサクセス協会